飲食店を経営する上で、誰がどの作業をするのかというのはとても重要な要素です。
特にアルバイトを雇った場合、どのくらい仕事を教えて、どこまで仕事をしてもらうのかということには、多くの人が頭を悩ませていると思います。
そこで、マニュアルを作って作業を統一することで、より楽な営業を可能にする方法を説明します。
1.マニュアル作成の必要性

たくさんの従業員がいるお店には必ずと言っていいほど、マニュアルが用意されています。
それはなぜでしょうか。
マニュアルには大きく3つの役割があります。
です。
1-1.業務の統一
まず最も大きな役割としては、業務の統一ができるということが挙げられます。
マニュアルとして、作業を言葉にすることで認識のずれをなくし、共通の理解を生み出すことができます。
それぞれが違うやり方をしていると効率が悪くなり、うまくまわらなくなってしまうだけでなく、接客や料理の質もバラバラになってしまいます。
誰がやっても同じレベルのサービスができることは、飲食店が繁盛していくためには重要であり、そのためにはマニュアルを作成することが必要なのです。
1-2.説明の簡略化
しっかりとしたマニュアルがあると、業務の説明を簡略化することができます。
何をどこまで理解したかを把握しやすくなるので、複数人で教える場合、どの作業をすでに教えたのかなどの共有もスムーズです。
マニュアルに基づいて説明することで、教える人によって内容が変わってしまうということや、説明漏れが起きるという事態を防ぐことができます。
また、教える側も0から説明を考えるよりも、しっかりと考えられた説明文をもとに説明する方が楽になります。
1-3.各自の復習の効率化
仕事の量が多いと、一度で完璧に覚えるのはとても難しいです。
しかし、飲食店の営業中では、覚えきれていない仕事をしなければいけない場面は多くあります。
そのようなときに、うまくまとまっているマニュアルがあると、見直しやすく、すばやい対応につながりやすいのです。
1-4.マニュアル作成の必要性のまとめ
これらのマニュアルの役割は、スタッフの作業効率や満足度を高めます。
スタッフ一人ひとりの作業の質やスピードが上がることも大切な要素ですが、労働環境の充実という点で長続きしやすくなるのも、マニュアル作成の魅力的なメリットです。
これらのメリットが結果的に売り上げ向上につながるのです。
もし、スタッフ数が多くないお店でも、日によってサービスの質が変わってしまうなどが内容に、マニュアルを作ってみることをお勧めします。
また、もうすでにマニュアルがあるお店も、この機会に見直してみましょう。
2.マニュアルの種類と作り方

マニュアルを実際に作り始める前に、マニュアルにはどのような種類があるのかを確認してみましょう。
マニュアルは大きく3つの種類に分けられます。
- 基本的なマニュアル
- 業務内容のマニュアル
- 緊急時のマニュアル
です。
これらは必要になる場面が分かれているので、ひとまとめにせずに分けて用意すると良いです。
2-1.基本的なマニュアル
基本的なマニュアルとは、経営理念や方針、心構えなどを説明するものです。
2-1-1.概要
基本的な内容を説明するマニュアルでは、具体的な作業よりも、どういう接客が良いのかなどの心構えなどを説明します。
また、出退勤時のルールや実際の労働に際する決まり事などを共有します。
2-1-2.作り方
まずお店のテーマや経営理念をはっきりと説明します。
そうすることで、心構えや労働時のルールを取り決める際にも、根拠や理由付けができるからです。
スタッフ全員が同じ認識で働けるよう、テーマや理念から理屈をたてて、その他の説明につなげましょう。
ここで書く内容は、テーマや理念、心構え、労働時のルールなどのほかに、どのような客層をターゲットにしているなどの、経営戦略に関わる部分の説明なども良いでしょう。
2-2.業務内容のマニュアル
業務内容のマニュアルは、各業務のやり方や注意点を説明するものです。
2-2-1.概要
業務内容のマニュアルでは、業務をやるための手順や、そのための注意点を細かく説明します。
このマニュアルに漏れがあると、実際の作業を行う際に問題が発生したりするため、何度も見直してミスなく作りましょう。
業務内容を教える時だけでなく、実際に業務を行う中でうまくいかない時に見返すなどの用途もあります。
作業の手順を簡単に説明する部分と、細かな説明の部分を分けて作りましょう。
また、調理マニュアルや接客マニュアルなど、細かく作り分けておくことで、欲しい情報を探しやすくすることも非常に大切です。
2-2-2.作り方
業務内容のマニュアルは、時間がないタイミングで見直す可能性も考えて、目次をわかりやすく作りましょう。
目次を細かく作り、作業手順のパートと、各手順ごとの細かな説明のパートをはっきりと分けます。
目次、手順説明、細かい説明、の順に作るとわかりやすくなります。
細かい説明の部分では、実際の業務で出た疑問などに答えられるような内容を細かく書き足していくと、漏れがどんどんなくなっていきます。
最初から完全なものを作れるのが理想ですが、少しずつ良くしていくという発想を持つことも重要です。
2-3.緊急時のマニュアル
緊急時のマニュアルは、イレギュラーなできごとに対応する方法を説明するものです。
主にクレーマーや、スタッフの大きなミスなどの対応です。
2-3-1.概要
緊急時のマニュアルでは、通常業務では起きないできごとに対応する方法を説明します。
クレーマー、スタッフのミスなどの構想外のできごとのほかに、店長が不在であったり、災害が起きた時などの想定できることについても対応方法を説明しましょう。
2-3-2.作り方
緊急時のマニュアルは、予定していないできごとへの対応を説明するため、事前の準備段階で完全なものを作るのはとても難しいです。
そのため、常に新しくしていくものだという認識を持ちましょう。
まず、緊急時のできごとを少しでも多くリストアップします。
それらを分類していき、目次を作っていきます。
緊急時に確認するものなので、きちんと目次作成をしないと、探すのに時間がかかってしまうことに注意してください。
探しやすさにこだわることが、よいマニュアルのポイントです。
3.実際のマニュアルの作り方

それでは、実際にマニュアルを作成していきましょう。
マニュアルの作成には大きく8個のステップがあります。
- 目的を明確にする
- 情報を集める
- マニュアルを分類する
- 目次を作る
- デザインを決める
- 本文を作成する
- スタッフの意見をもらう
- 再度作成する
です。
3-1.目的を明確にする
まず最初に行うのが、目的の明確化です。
このマニュアルは何を目的に作るのかというものをはっきりとさせましょう。そのために役に立つのが「5W2H」の考え方です。
「誰が(Who)」「何を(What)」「いつ(When)」「どこで(where)」「なぜ(Why)」「どのように(How)」「どれくらい(How Much)」から考えていくと、マニュアルの使用目的がはっきりします。
3-2.情報を集める
マニュアルの中身になる情報を集めます。
文章化する必要のある業務や作業が何かを洗い出します。
また、業務を行うのに役立つ知識などを調べてくると良いでしょう。
実際にマニュアルを活用しているお店などの情報を探して参考にするのもとても役立ちます。
知識の少ないスタッフに、曖昧な内容や知りたい内容などを聞くという方法もあります。
3-3.マニュアルを分類する
このマニュアルが「基本的なマニュアル」「業務内容のマニュアル」「緊急時のマニュアル」のどれに分類されるのかを考えます。
また、各分類の中でもより細かくカテゴリ分けをすると、さらにわかりやすくなります。
この分類作業をすることで、マニュアルの目的を再確認できます。
3-4.目次を作る
実際に文章を書く前に目次を作ります。
マニュアルは探しやすさがとても重要なので、目次の項目はなるべく細かく作りましょう。
また、本文は目次を基本に作るので、内容に漏れがないようにこの段階で何度も見直しをしていきましょう。
また、見出しや項目の大きさに応じて、字の大きさを変えたり、色をうまく使ったりして見やすくしていきましょう。
例)レジ業務のやり方
1.伝票を受け取る
・伝票を受け取る際の注意点
…席を間違えない
…伝票が複数ある場合に忘れずに計算する
3-5.デザインを決める
視線の動きは、左→右、上→下に動いていくため、左上からスタートする横書きがおすすめです。
また、見出しの大きさごとに始まりの位置をずらすことで、どこを読んでいるのかわかりやすくなります。
色やデザイン加工などは見栄えを良くしますが、使いすぎはわかりにくくしてしまいます。
なので、目立たせたい重要なところだけで使うようにしましょう。
デザインを決めたら実際に目次を当てはめてみて、見づらくないか何度も確認します。
3-6.本文を作成する
デザインに目次を当てはめたところで、本文を作成します。
読んだ人が、わからなかった点、疑問に思っていた点が解決されるように、簡潔で不足のない文章を作りましょう。
この本文がわかりにくいと、他の要素が良くても意味がありません。
過不足のない説明を、説明される側の視点も踏まえて考えていきましょう。
3-7.スタッフの意見をもらう
マニュアルがある程度完成したら、自分以外の人の意見をもらうことが大切です。
業務の知識がある人とない人の両方に見てもらい、足りない要素やわかりにくいポイントを洗い出します。
特定の業務に詳しい人などがいたら、その人の専門的な意見をもらうのも大切です。
3-8.再度作成する
集めた意見をもとに作り直します。
マニュアルを作る人と読む人では、業務の知識や理解に大きく差があります。
実際にマニュアルを必要としている人の意見を取り入れないと、形式だけのものになってしまいます。
そうならないためにも、もらった意見をきちんと反映させて、スタッフが活用できるものを作りましょう。
3-9.マニュアルの作り方のまとめ
マニュアルの作り方は以上になります。
ステップはたくさんありますが、全体を通して「わかりやすく」「探しやすく」「人の意見を反映させる」を意識することが重要なポイントです。
こうしてみると大変な作業ですが、作った後はさまざまな業務を効率化させるとても便利なものなので、時間をかけてこだわりのものを作りましょう。
4.まとめ

マニュアルの作り方を見てきてどうだったでしょうか。
マニュアルはそのものの効果だけでなく、その業務が必要かどうかなど、お店の経営を全体的に見直す機会になります。
ただ新人の育成用に作るというのではなく、たくさんあるメリットが活かせるようなものを作りたいですね。
マニュアル作成はシンプルですが、
- 客観的な意見を取り入れるのが難しい
- しっかりと作りこむのが大変
など、難しいポイントがたくさんあります。
本記事ではなるべく解決できるように解説していますが、マニュアル作成はプロに相談しながら進めるのがベストです。
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